|
設計に対する考え方
施主の要望をそのまま形にするだけでは、「いい家」はできないのではないかとよく思います。要望とは、施主のそれまで住んできた体験が元になって出てきたものですが、そのような「過去」だけを拠り所にしていては、これからの生活を切りひらいていく力に欠けるのではないでしょうか。
私が目指すのは、もっと「懐の深い家」です。これまで自分がしてきた家の中での過ごし方とは少し違うけれど、新しい生活を受け入れてくれたり、今までとは異なる生活の仕方を常に発見していけるような家を作りたいと思っています。 | | |
|
住み始めたときではなく、何年目かに気づく良さもあります。だから、施主の要望を聞くときも、視野を広く持っておくように気をつけています。
たとえば「ソファーに座って大画面のテレビを見たい」という要望が出たとき、そのまま言葉どおりに受け取るのではなく、奥にある意味までくみ取ることが大事だと考えています。つまり、リラックスするには本当にテレビとソファーでなければいけないのか、と立ち止まって考える。すると、もしかしてソファーでなく大きなテーブルを置いたら、子供の勉強を見ながら本が読めていいかもしれない、親子の新しいコミュニケーションが生まれるかもしれない。このように、施主の家族関係や人生まで含めて考えるのです。 | | |
|
家づくりが、施主にとって「どう生きていきたいか」といったことを考えるきっかけになってほしいですね。
ただ、真剣に考えると家族で意見が分かれることもあるし、頑張りすぎると家づくりが辛い労働のようになってしまうこともあります。そんなときは、建築家として、さまざまな希望をかなえるベストな回答を出すことだけでなく、率先して楽しい雰囲気をつくるように心がけています。(東信洋)
| |